なぜ?イップスを発症するのか?

イップスの原因

正直なところ、イップスの本当の原因はまだ解明されていません。
ですが、これまで数多く、イップス克服のお手伝いしてきた経験から私なりには明確な答えがあります。
ここでは私が考えるイップスの原因についてお話ししたいと思います。
イップスでお悩みの方はご自身に当てはまる事がないか、振り返っていただくと良いと思います。
ほとんどの方が思い当たるところがあるはずです。

イップスは精神的、または心の問題なのか?

まず、結論からお話しします。
イップスは精神的な問題や心の問題ではありません。
もちろん「精神や心は全く関係がない」とは言いません。
そもそも、人間は身体と精神(心)がそれぞれ関係しあって存在しています。
そういう意味ではイップスに精神や心が関係しているのは当然の事です。

 

ただ、だからと言って、それらが直接イップスを起こしている原因ではありません。
メンタルが弱いからイップスになるわけではないのです。
その為に、精神的な症状として、メンタルトレーニングなどでイップスを治療しても、その効果は期待できないでしょう。
それどころか、余計に酷くなる可能性もあります。
ですので、私はメンタルトレーニングなどの精神または心からのアプローチはお勧めしません。
また、万が一、イップスに陥ってしまっても、イップスは心の病などではないので、安心してほしいと思います。

イップスは肉体的な問題なのか?

では、イップスは肉体的な問題なのか?
これも違います。

 

確かにイップスに陥ると身体が自由に動かなくなります。
その為に肉体的な問題を疑いたくなるのも分かります。
ですが、身体には問題はありません。

 

イップスは今まで普通に出来ていた事がある時、突然出来なくなります。
これは肉体的に故障や怪我など、何か、問題が起こったわけではありません。
その為に、痛みなどを伴う事は無い、または非常に稀のように思います。
(少なくても、今までレッスンしてきた方にはいませんでした)

イップスの本当の原因は何か?

イップスの本当の原因を知る事はとても重要です。
何故なら、原因を見誤ると適切な対処が出来ないからです。

 

物事は本当の原因が分かれば、その問題を解決する事で現象、結果を変える事が出来ます。
イップスにも全く同じ事が言えます。

 

では、イップスの本当の原因は何か?
それは脳に描く目標イメージと筋肉活動のイメージの乖離です。
本来はこの二つのイメージは一致するべき物です。
ですが、この二つのイメージが乖離すると筋肉が誤作動を起こし始めます。
本来の指示命令系統とは違う命令によって、筋肉活動が混乱するからだと私は考えています。

イップスの原因と二つの意識

私達には顕在意識と潜在意識の二つの意識が備わっています。
顕在意識は自意識とも言える物で、自分で自覚する事が出来ます。
また、論理的な思考や推論、意思決定などの役割を担っています。
それに対し、潜在意識は顕在意識の奥に隠れ、自分では気づく事が出来ません。
ですが、潜在意識は身体を維持する為に常に働き続けています。
例えば、呼吸は何も意識しなくても、自動的に行われています。
また、心臓の鼓動も同じです。
特に意識していないにも関わらず、休むことなく、自動的に働き続けてくれます。
これらは潜在意識の働きのおかげです。
つまり、顕在意識は頭の意識、潜在意識は身体の意識と言えるわけです。

 

では、テニスに必要な身体の動きはどちらの意識でコントロールされるべきか?
答えは潜在意識です。
本来、テニスのフォームや打ち方は頭で身体に命令をして身につける物ではありません。
潜在意識に任せて、動かすべき物です。

 

顕在意識の役割は意志決定です。
潜在意識の役割は身体のコントロールです。

 

にも関わらず、顕在意識が潜在意識の役割である身体のコントロールをすると顕在意識と潜在意識が干渉しあいます。
すると段々、頭と身体が乖離し始めるわけです。
これが進むとイップスに陥ります。

私が陥ったサービスのイップスの原因

イップスの原因をもう少し詳しくご説明する為に、私がサービスのイップスに陥った時の事をお話しします。

 

私がサービスのイップスに陥ったのは初級者クラスのレッスン中でした。
生徒さん達にレシーブの練習をする為に、私がサーブを打っていました。
ところが、普通に私のサーブを打つと速過ぎて、生徒さん達の練習にはなりません。

 

その為に、私は普段打つ事が無いような出来るだけ緩いボールが必要でした。
この時、私がしていた事は腕が速く動かないように意識してゆっくりと振る事でした。
すると、ある時、突然、手首、腕が勝手に動き、ボールは奥のフェンスまで飛んで行きました。
これが私がイップスに陥ったきっかけです。

 

では、この時、私には一体どんな事が起こっていたのか?

 

脳の目標イメージ:生徒さんの練習の為の緩いサーブ
筋肉活動のイメージ:普段自分が打つサーブに必要な筋肉活動

 

筋肉には今までに私が身につけたサーブに必要な速度で動く筋肉活動のイメージがあります。
ところが、そのイメージで身体が動くとボールが速過ぎて生徒さんの練習になりません。
その為に、私は頭で意識して腕をゆっくりと動かそうとします。

 

つまり、本来は潜在意識で動かされるべき、身体のコントロールに対して、私は頭で腕をゆっくり振るように命令していたわけです。
この為に、頭と身体がバラバラになってイップスに陥ってしまったのです。

イップスに陥る過程

イップスに陥るには必ず原因となる過程が存在します。
私の場合は腕を無理にゆっくりと動かす事でした。

 

それ以外にも様々なケースがあります。
例えば。
・正しいスイングで緩いボールを打とうとする
・正しいスイングで短い距離を打とうとする
・正しいスイングでボールを低く打とうとする
・ボールのイメージとは関係なく正しいスイングを身につけようとする
・・・・・・

 

これらの過程は人によって様々で、決まった物がありません。
その為に数えだすとキリがありません。
ですが、どのケースにおいても言える事は無理に身体の動きをコントロールしようとしている事です。
本来、私達の身体(筋肉)は経験によって得られる感覚情報によって動かされる物です。

 

ところが、この感覚情報を度外視して、頭で意識して身体を動かそうとする事は本来は潜在意識領域でコントロールされるべき、身体のコントロールに支障をきたします。
これがイップスに陥る原因です。

私達の意識と筋肉の仕組み

私達の身体は骨と筋肉で出来ています。
筋肉には下記の二つの種類があります。

随意筋
自分の意識で動かすことの出来る筋肉。骨格筋がこれにあたります。
不随意筋
自分の意識で動かすことの出来ない筋肉。心筋、平滑筋(胃腸などの筋肉)がこれにあたります。

心臓や胃腸を意識して動かす事が出来ないのは、それらが不随意筋によって支配されているからです。
ですが、骨格筋である随意筋は意識して動かす事が出来ます。

 

その為に骨格筋を使って、テニスの動きをコントロール出来るわけです。
ですが、ここで多くの方が勘違いしている事があります。

 

それは、フォームや打ち方を意識して身につけようとする事です。
確かに随意筋は意識して動かす事が可能です。
ですが、だからと言って、顕在意識でコントロールするべき物ではありません。
何度もお話ししているように、本来は骨格筋のコントロールも潜在意識が司っています。

 

顕在意識の本来の役割は「意思決定」です。
筋肉を意識して動かす事ではありません。

 

では、この事を的にボールを投げる動作の仕組みを例にご説明します。
ここを勘違いするとイップスに陥る可能性が急激に高まります。

 

「的にボールを投げる仕組み」
顕在意識:意思決定
「的にボールを投げる」と決める(イメージする)
潜在意識:身体のコントロール
自動的に骨格筋を動かし、無駄のない効率的な動きを学び、実現する

 

本来は上記のように顕在意識はただボールを的に投げるイメージをするだけで、潜在意識が自動的に自己修正能力を働かせながら、それに必要な動きを学び、身につけてくれます。
ところが、一般的な練習では的にボールを投げる為に必要な身体の動かし方、使い方を顕在意識で身につけようとします。
これは本来の仕組みに反する練習なのです。
その為に、イップスに陥る原因になります。

脳と筋肉活動の自己修正能力

私達の脳と身体(筋肉活動)には非常に高性能な自己修正能力が備わっています。
赤ちゃんが誰に教わるわけでもなく、歩き始めるのはこの能力を活用しているからです。

 

この自己修正能力の源となるのが感覚情報(イメージ)です。
五感で感じた情報を蓄積する事で自動的に自己修正し、望む結果を実現する為の動きを身につけています。
ただし、すぐに完全な動きが身に付くわけではなく、ミスや間違いから学びながら、段々と洗練された動きに進化していきます。
その為に脳と身体は3段階の制御システムを活用します。

 

では、この事を先ほどと同じように的にボールを投げる動作の仕組みを使ってご説明します。

 

顕在意識の役割

的にボールを投げるイメージ(意思決定=目標イメージ)

 

潜在意識の役割

第1段階:シーケンス制御
 

「動きを知る」段階(精度が非常に低い段階)
・骨格筋に命令を送り、ボールを投げる
その経験から目標イメージとの差異を感じる=的へのコントロール、腕の動きの速度や角度、その他の全身の動きなど

 

第2段階:フィードバック制御

「動きの調整」をする段階(徐々に精度が高まる段階)
・経験を繰り返す
目標イメージと現実を比較し、その時に五感から得られる感覚情報をフィードバックする。
自動的に微調整を行い、腕の動きの速度、角度、その他の全身の動きを協調させ、目標イメージを実現する動きを学ぶ

 

第3段階:フィードフォワード制御

「洗練された動き」を身につける段階(精度、再現性、汎用性、対応力を伴った段階)
・経験を繰り返す
目標イメージと現実を比較し、その時に五感から得られる感覚情報のフィードバックを必要としない段階。
高さや距離を変えて、初めて投げる場所に的を置いても、フィードバックが必要なく、ボールをコントロール出来るようになる。

 

上記のように潜在意識は3段階の脳の制御システムを活用し、徐々に洗練された動きを習得するように全身をコントロールします。

 

ここで非常に重要なのはこれら3段階で起こっている出来事は自覚する事が出来ない事です。
これらの働きは全て潜在意識による働きです。
つまり、顕在意識(頭)では自覚できない領域で行われています。
その為に、感覚的には下記ような状態になります。
「なぜ、ボールが上手く的に投げれるのか、分からない」
「勝手にボールが的の所に飛んで行く」
「身体が自然とスムーズに動いてくれる」
このような感覚になります。
これが本来の身体の使い方であり、「歩く」動きなどと同じです。

 

逆に顕在意識(頭)で意識して、動きを調整すると潜在意識下で行われる3段階の制御システムを活用出来なくなります。
さらにそれだけではなく、潜在意識と顕在意識の干渉によって、イップスに陥る可能性を高めてしまいます。

 

スポーツでは「頭で分かる」と「身体が出来る」は全く違う質の物です。
頭(顕在意識)で意識して、動きを覚える練習をすると「頭で分かる」が「身体では出来ない」状態になります。
それに対し。
頭(顕在意識)で意識せず、潜在意識に任せて練習をすると「頭では分からない」が「身体は出来る」状態になります。

 

ちなみにイップスは前者の状態が進行してしまった状態でもあります。
その為に、イップスは誰もが陥る可能性を持っています。

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