なぜストロークがアウトするのか?どうすれば、コートに入るのか?その本当の理由
今回は「ストロークがアウトするので困っている」と言う方の為にその原因と対策、そして、練習方法等についてお話ししたいと思います。
一般的にはアウトミスが多いと。
「打点を前にすれば、アウトしませんよ」
「ラケット面を調整すれば、アウトしませんよ」
「トップスピンをかければ、アウトしませんよ」
「スイングを下から振れば、アウトしませんよ」
こんな風にフォームや打ち方を改善する為のアドバイスをされると思います。
ですが、それを実践してみてどうでしたか?
コートに入るようになりましたか?
多分、「コートに入る時もあればアウトする時もある」
こんな状態になっているのではないでしょうか?
残念ながら、フォームや打ち方、打点を調整するように練習しても、実際にはストロークのアウトミスは減らないんです。
こんな練習を続けていると「結局、どうすれば良いの?」って答えが見つからず、迷路にハマりこむ事になります。
でも、安心してください。
実はボールが飛びすぎる本当の理由が分かれば、誰でも、アウトミスは激減するんです。
なぜ、ボールが飛ぶ距離は変わるのか?
では、まず、最初にボールが飛ぶ距離について考えてみましょう。
そもそも、なぜ、ボールは飛ぶ距離が変わるのでしょう?
たくさん飛んで行く事もあれば、そうではない時もありますよね。
当たり前の事ですが、ボールの距離は物理的な条件によって、その距離が変わります。
この事を知る事はボールの距離をコントロールする為にはとても大切な事です。
距離が変わる条件が分かれば、ボールの距離を調整がしやすくなるからです。
ところが、この事を知らないでアウトミスで悩んでいるプレーヤーは非常に多いです。
と言うのは、残念な事にテニスコーチでさえ、気づいていない人は多いので、あまり教わる事がないからです。
では、話を元に戻します。
なぜ、テニスボールは飛ぶ距離が変わるのか?
その条件は3つあります。
1.ボールに与えるエネルギーの大きさ
2.インパクト後に打ち出される角度
3.ボールに与えられる回転の質と量
以上の3つの条件がボールが飛ぶ距離を変えます。
1.ボールに与えるエネルギーの大きさ
ラケットでボールを打つという事はボールに何らかのエネルギーを与えるという事です。
そのエネルギーが大きければ、距離は長くなります。
逆に小さければ、距離は短くなります。
簡単に言えば、強く当たれば、たくさん飛んで、優しく当たれば、あまり飛ばないって事ですね。
2.インパクト後に打ち出される角度
テニスボールが飛んで行く距離が一番長くなる角度は45度です。
地球上で物を飛ばす限りはこの条件は変わりません。
どんな大きさ、どんな重さであっても、45度で打ちだされた時、飛んで行く距離は一番長くなります。
逆に言えば、45度以外の時は距離が短くなるという事でもあります。
ですから、距離が短くなる角度には2種類あります。
一つは45度以下の場合。
45度から0度に近づくにつれて飛んで行く距離は段々短くなります。
もう一つは45度以上の場合。
45度から90度に近づくにつれて飛んで行く距離は段々短くなります。
3.ボールに与えられる回転の質と量
3つ目の条件はボールに与えられた回転の質と量です。
ボールが進行方向に向かって上から下に回る場合、いわゆるトップスピンがかかった場合。
ボールは下に落下しようとします。
その為に、この回転が速くなれば、距離はより短くなります。
それに対して、進行方向とは反対方向に上から下に回る場合、いわゆるスライスがかかった場合。
ボールには浮力が与えられます。
その為にこの回転が速くなれば、距離はより長くなります。
これら3つがボールが飛んで行く距離が変わる物理的条件です。
つまり、この条件のバランスが整っている時、テニスボールは安定してコートの中に納まるという事になります。
逆にこの条件のバランスが崩れるとボールはアウトまたはネットしてしまう可能性が高まります。
正しいフォームで打てばアウトしないのか?
一般的にはボールがアウトするとまず、アドバイスされるのが正しいフォームです。
「打ち方が良くなれば、ボールはコートの中に収まるよ」と言う考え方に基づいて指導されるからです。
その為に膝の使い方や体重の移動の仕方、ラケットの振り方やスイングの軌道なんかがアドバイスされます。
例えば、「打点を前にすれば、アウトしないよ」と言うアドバイスは特に多いと思います。
ですが、ちょっと待ってください。
本当に正しいフォームで打てば、ボールはアウトしないのでしょうか?
まずはこの常識を疑う必要があります。
もし、この常識が正しいのなら、フォームが崩れた場合は必ず、ボールのコントロールは乱れ、アウト(またはネット)する事になります。
でも、実際はそんな事はありません。
トッププロ達でさえ、打点が遅れたり、逆に前過ぎたり、足が間に合わず、バランスが崩れたり。
ラリー中は色々な状況でプレーしています。
それでも、ボールはアウトする事無く、コントロールされます。
これは打点やバランスが崩れた状態、つまり、正しいフォームでなくても、ボールをコントロールする事は可能だという事でもあるんです。
でも、考えてみれば、理由は簡単です。
例え、正しいフォームでなくても、さきほどの3つの条件を満たしていれば、ボールの距離をコントロールする事は出来るからです。
この事からテニスには下記の4つの状態が考えられます。
1.正しいフォームで打つ ⇒ アウトしない
2.正しいフォームで打つ ⇒ アウトする
3.正しくないフォームで打つ ⇒ アウトする
4.正しいないフォームで打つ ⇒ アウトしない
つまり、結論を言うと、正しいフォームで打てば、アウトしないわけではないという事です。
正しいフォームとボールを飛ばす距離の感覚は別物だという事でもあります。
ですから、正しいフォームで打つ練習ばかりしていても、実はストロークのアウトミスは無くならないんです。
非常にたくさんの方がここを勘違いしていますので、注意してほしいと思います。
トップスピンをかければアウトしないのか?
アウトが多いプレーヤーに次に多いアドバイスが「トップスピンをかけましょう」と言う物です。
これは「トップスピンがかかれば、ボールが落下するのでコートに収まる」という考え方に基づいたアドバイスです。
ですが、この常識も先ほどと同様疑った方が良いです。
トップスピンがかかったからと言ってボールがコートに収まるわけじゃないからです。
もし、トップスピンがかかれば、アウトが無くなるなら、トッププロのアウトミスは0にならないといけません。
彼等のボールには驚異的なトップスピンがかかっているからです。
ですが、現実はそうではありません。
彼等だって、やはりアウトミスをする事はあります。
確かにトップスピンがかかる事でスライスや無回転のボールに比べれば、コートに収まりやすくなる事は確かです。
ですが、トップスピンをかける練習をしたからと言ってアウトしなくなるわけではないんです。
やはり、先ほどと同じように4つの状況が考えられるからです。
1.トップスピンがかかる ⇒ アウトしない
2.トップスピンがかかる ⇒ アウトする
3.トップスピンがかからない ⇒ アウトしない
4.トップスピンがかからない ⇒ アウトする
この場合もトップスピンをかけても、先ほど紹介した3つの条件のバランスが崩れていたらアウトするわけです。
ですから、アウトするからと言って、闇雲にトップスピンの練習をしてもストロークのアウトはなくなりません。
特に「アウトするなら、もっと回転量を増やそう」と言う考え方は非常に危険です。
トップスピンは「エネルギー」「打ちだし角度」に比べて、距離に与える影響が最も小さいからです。
その為に、回転過多になってボールに威力が無くなるにも関わらず「結局アウトミスは減らない」という最悪の状況に陥るプレーヤーも少なくありません。
あなたはそんな悪循環に陥らないようにしてくださいね。
ボールがアウトしない為に必要な事
先ほどのお話しで正しいフォームで打っても、トップスピンをかけても「アウトミスが無くなるとは限らない」という事はお分かりいただけたでしょうか。
では、どうすれば、ボールがアウトしないようになるか?
答えは最初にお話しした3つの条件のバランスを整える事です。
このバランスを整える感覚が分かれば、多少フォームや打点が狂っても何の問題もなく、ボールをコートに収める事が出来ます。
これがアウトミスせずに安定して、ストロークをコート内に収めるプレーヤー達がしている事であり、また、あなたが練習するべき内容です。
では、具体的にどんな練習をすれば、この3つの条件のバランスを整える事が出来るか?
ポイントは二つあります。
一つはインパクトの時のエネルギーの大きさを感じる事。
そして、もう一つはインパクト後に打ち出される角度を45度以上にする事。
この二つです。
ちなみにトップスピンをかける練習はそれほど重要ではありません。
理由は先ほどもお話ししたように、トップスピンは「エネルギーの大きさ」「打ちだし角度」に比べると距離に与える影響が小さいからです。
ですから、まずは、影響が大きい「エネルギーの大きさ」「打ちだし角度」のバランスを取る感覚を練習します。
1.エネルギーの大きさ
2.打ちだされる角度
この二つの感覚を身につけてからトップスピンをかける練習に移ります。
そうすると、相手に迫っていくような本当に威力のあるトップスピン、いわゆるエッグボールのようなトップスピンを身につける事が出来ます。
ちなみに1と2の感覚が無いにも関わらずトップスピンをかける練習をすると、将来、精度と威力を両立したトップスピンが打てなくなるので注意してください。
では、まず、エネルギーの大きさからお話しします。
まず、一番最初にするべき事はボールに与えたエネルギーの大きさを知る事です。
どれぐらいの衝撃(エネルギー)を与えれば、どれぐらいボールが飛んで行くのか?
その物差しのような物を知る事がとても重要です。
ボールをインパクトすると、必ず何らかの衝撃や振動を手のひらに感じるはずです。
この衝撃や振動を感じ、その時、ボールはどれぐらい飛んで行くのか?
これを見比べるようにします。
少し練習をすれば、段々とどれぐらいの衝撃で当たれば、どれぐらいボールが飛んで行くのか?
その距離が分かってくるはずです。
ある程度の距離が分かれば、次は「打ちだされる角度」の練習に移ります。
先ほどもお話ししたように、ボールの距離が短くなる条件は二つあります。
一つは45度~0度の場合。
そして、もう一つは45度~90度の場合。
このどちらでも、ボールがそれぞれ、0度、90度に近づくにつれて距離は段々短くなります。
ところが、テニスの場合、45度~0度の条件は使えないのです。
何故だか、分かりますか?
理由はネットがあるからです。
確かに打ちだし角度を0度に近づけていけば、ボールの距離は短くなります。
ですが、それは段々ネットに近づいていく事でもあります。
という事は、例え距離が短くなってもそれは非常にリスキーで不安定なボールになるという事になります。
その為に、ショートクロスやドロップショットなどネットに近い場所に打つ事は出来なくなります。
ですから、安定した強いボールを打つ為には45度~90度の間でボールの距離をコントロールするようにします。
これがアウトせず、ストロークを安定してコートに収めるプレーヤー達がしている事です。
ちなみに90度、つまり、真上にボールを打ちあげてみてください。
そのまま、真下にボールが落ちてきます。
つまり、距離は0です。
なぜ、コートに収まらず、いつも自分が思っている以上にボールが飛んで行ってしまうのか?
それは、打ちだし角度が45度に近いからです。
自分ではそんなつもりはないかもしれません。
ですが、結果的に思っている以上に距離が長くなるという事は、そういう事です。
では、どうすれば、思った距離に収まるか?
90度に近づくようにどんどん上に打ち出せば良いんです。
ところが、一般的には上に打てば、余計にボールの距離が長くなると勘違いしている方が非常に多いです。
アウトミスが多い方は特にここに勘違いがあります。
でも、試してみてください。
驚くほど、簡単に距離が短くなって、コートに収まるようになります。
もちろん、少し上に打ち上げたからと言って、いきなりコートに収まる事はないかもしれません。
ですが、「アウトしたら、もう少し上に打ち上げる」「また、アウトしたら、もう少し上に打ち上げる」
これを繰り返して、90度に近づけていきます。
そうすると、どこかで自分がイメージしている距離に収まる角度が出てきます。
この感覚が分かれば、しめた物です。
後は不思議と、ボールがいつもコートに収まるようになります。
ただ、この角度はいつも決まっているわけじゃありません。
インパクトで強くボールを打てば、その分、また上に打ち上げる必要がありますから注意してくださいね。
エネルギーの大きさと打ちだし角度、そして、回転の質と量はあくまでもバランスで成り立っています。
どれかが変われば、バランスを取る為に、他の二つも変わる必要があると言う事です。
これがストロークのアウトミスが多い人に起こっている事とその改善方法です。
と言ってもこれはあくまでも理論、理屈であって、実際にボールをコントロールする為にはこれを感覚的に身につける必要があります。
その為には少しの反復練習が必要になります。
まとめ
一般的にはストロークがアウトするとフォームや打点などの打ち方を指導されると思います。
本当にいろんな改善方法や矯正法があります。
ですが、残念ながら、どの方法で調整しても、打ち方を改善している限りは「コートに収まる事もあれば、アウトする事もある」という状態が続きます。
つまり、安定したストロークにならないんです。
理由はボールの距離はフォームや打ち方で決まるわけじゃないからです。
この間違った常識から抜け出す事が出来れば、ストロークのアウトミスはすぐに激減します。
練習はとてもシンプルです。
1.エネルギーの大きさ
2.打ちだし角度
この2つを練習するだけです。
ちなみにこの練習方法を紹介すると「??それだけで本当に上達するの?」と疑問に思う方が結構います。
ですが、本来、テニスはとてもシンプルな物です。
難しい事なんて考える必要はないんです。
ジュニア達を見てください。
彼等は難しい事なんて考えていません。
シンプルに練習しています。
だからこそ、上達が早いんです。
逆に大人になると色々細かく意識しすぎています。
それがかえってテニスを難しくしているんです。