ダブルフォルトしないコントロールを身につけるには
今回は「サーブが入らない」とお悩みの方の為にサーブをコントロールするコツについてお話しします。
サーブは正しい手順で練習すれば、難しいショットではありません。
ところが、必要な体験をすっ飛ばして、練習すると、どうやって、ボールをコントロールすれば良いかが分からなくなります。
そうなるとダブルフォルトの迷路にハマりこんでしまいます。
テニスはサーブから始まります。
ストロークやボレーがいくら上手でもサーブが入らなければ、ゲームが始まりません。
まずは、確実にサービスエリアに入る感覚を磨いておきましょう。
では、順番にご説明していきます。
なぜ、サーブが入らないのか?
では、まず、なぜ、サーブが入らないのかを整理しましょう。
正しく現状を把握、認識しないと本当の原因を見失ってしまいます。
テニスは物理です。
地球上でプレーする限りは必ず必要な物理的な条件があります。
これを整える事が出来れば、サーブは間違いなく安定してコントロール出来るようになります。
逆に言えば「サーブが入らない」のは「必要な物理的条件に気づいていないから」とも言えます。
さて、それでは、話を元に戻します。
なぜ、サーブが入らないのか?
実は大きな問題は二つしかありません。
それはアウトとネットです。
「サーブが入らない」と悩んでいる方はネットとアウトを繰り返して「どうして良いか分からない・・・」と言う状態に陥っている事がほとんどです。
つまり「アウトをしないように打てば、ネットをして、ネットをしないように打てばアウトする・・・」
こんな状態が続く為に「どうすれば、サービスエリアに入るのか?」分からなくなってしまっているわけです。
サービスエリアはパッと見るとコートの約半分、そして、入れる場所は1/4ほどです。
これを見ると一見広そうに思い「ネットの上から打ち込めば入りそう」と思うかもしれません。
ですが、実はサービスエリアはそれほど広くはありません。
理由は簡単です。
ネットが邪魔をするからです。
ちなみにテニスコーチをされている方はサーブで悩む生徒さんに一度聞いてみてください。
「実際に狙う事が出来るサービスエリアの広さはどれぐらいだと思っていますか?」と。
ほとんどの生徒さんは「あまり考えていない」と答えてくれると思います。
少なくても、「サービスエリアは思っている以上に狭い」と認識してる方はまず、いないはずです。
このように「サービスが入らない」と悩んでいる方は実はサービスエリアの広さを勘違いしている場合が非常に多いです。
見え目の広さに惑わされ、サービスエリアは予想以上に狭い事に気が付いていないのです。
実はこの勘違いこそがサーブが入らない最も大きな原因です。
サーブが入らないのは「打ち方に問題がある」と言う勘違い
先ほどもお話ししたように「サーブが入らない」と悩んでいる方の一番大きな問題はサービスエリアの勘違いです。
これを解消すると突然、結果が変わり始めます。
ところが、多くのコーチやプレーヤーは打ち方やフォーム、またはボールコントロールに問題があると判断しがちです。
その為に、打ち方やフォームを改善したり、ボールにスピンをかけたりする練習を繰り返します。
残念ながら、これではほとんど結果は変わりません。
「入ったり、入らなかったり」と言う状態が続き、努力と時間だけが過ぎていきます。
もちろん「打ち方やフォームは関係が無い」と言っているわけではありません。
ですが、練習していく手順と経験が違うのです。
いくら、フォームや打ち方を改善しても、ほとんどの場合は。
「打ち方が良くなって、ボールにも回転がかかり、コントロールも良くなった、でも、サービスエリアには入らない」
こんな状態になってしまいます。
ちなみに、こんな状態になると、ほとんどのテニスコーチは言います。
「良くなってきているので、そのまま練習していれば、安定して入るようになりますよ」と。
ですが、残念ながら、このまま練習しても「サービスが入らない・・・」と言う悩みは解消しません。
そもそも、サービスエリアの広さを勘違いしているわけですから、安定するはずがないのです。
その為に、ダブルフォルトの迷路にハマって、中々抜け出せなくなるんです。
まずは、サービスエリアの勘違いを解消する、そして、次にボールをコントロールする練習をする。
この手順で練習する事がとても大切です。
こうする事で、打ち方やフォームには改善点がありながらも「サービスエリアにはボールをコントロールする事は出来る」と言う段階に進む事が出来ます。
テニスのテクニックに完成はありません。
どんなプレーヤーであっても、必ず、未完成のままでゲームをする必要があります。
その為に、未完成ながらも、そのレベルなりにボールがコントロール出来る事が非常に大切なのです。
理想や最新の技術を追いかけるがあまり、ボールがサービスエリアに入らないようでは、本末転倒と言えるわけです。
サービスエリアの勘違いを解消しよう
では、サービスエリアの勘違いを解消しましょう。
まず、ベースラインに立って、相手コートを見ている状態をイメージしてみてください。
さて、その時、サービスラインはネットよりも上に見えるでしょうか?
それとも下に見えるでしょうか?
どちらだと思いますか?
実はこのイメージでサービスエリアを勘違いしているかどうかが分かります。
答えはサービスラインはネットよりも下に見えます。
つまり、ネットの網の中に見えると言うわけです。
ちなみに、サービスの打点の高さから見ても、この状態は変わりません。
確認するために、次回、コートに行った時に、出来れば、台などをベースラインにおいて、サービスの打点の高さから実際にサービスエリアを確認してみてください。
必ず、ネットよりも下に見えるはずです。
では、サービスラインがネットよりも下に見えるという事は何を意味しているのか?
これは、直線ではサービスエリアに入れる事は不可能だという事を表しています。
つまり、サーブをインさせる為には放物線を描く必要があるという事です。
上級者たちが打つどんなに速いサービスであっても、実は直線ではなく、放物線で飛んでいるのです。
*身長が2mを超える場合はこの限りではありません。
さて、直線でサービスエリアを狙う事が出来ないとなったら、サービスラインから手前どれぐらいの長さまでにボールをコントロールする必要があるでしょうか?
30cm?
1m?
2m?
実は非常に狭いエリアを狙う必要がある事が分かると思います。
つまり、サーブを安定して、インさせる為にはこの狭いエリアにコントロールする練習をしなければならないという事です。
ところが、サービスエリアを勘違いしているプレーヤーは「実際に使えるサービスエリアは非常に狭い」と言う事を知らないで「ネットの上から狙って行けば、インする」と思い込んでいるわけです。
ちなみに、サービスラインからの手前の長さを長くし、使えるサービスエリアを広くするにはどうしたら良いか?
それは放物線をより大きくする、つまり、山なりのボールに近づける事です。
こうする事で、サービスエリアは広くなります。
逆に直線的なボールになればなるほどサービスエリアは極端に狭くなっていきます。
サーブを安定して入れる為には、まずは、この勘違いを解消し、イメージを修正してください。
これが修正できないとテクニックをいくら改善しても安定したサーブを身につける事は出来ません。
サービスエリアに入れる感覚を掴もう
さて、サービスエリアの勘違いを解消したら、実際にサービスエリアにサーブを入れる感覚を掴んでいきましょう。
その為のお勧めの練習をご紹介します。
- 自分のコートのネットとサービスラインの真ん中あたりから相手コートのサービスエリアを狙う
- 自分のコートのサービスライン上から相手コートのサービスエリアを狙う
- 自分のコートのサービスラインとベースラインの真ん中あたりから相手コートのサービスエリアを狙う
- 自分のコートのベースラインから相手コートのサービスエリアを狙う
- 自分のコートのベースラインから2mほど離れたあたりから相手コートのサービスエリアを狙う
- 自分のコートのベースラインから4mほど離れたあたりから相手コートのサービスエリアを狙う
上記の1~6の練習を繰り返します。
それぞれの場所から2球打つと次の場所に移動して2球打ちます。
1⇒2⇒3⇒4⇒5⇒6⇒5⇒4⇒3⇒2⇒1⇒2⇒3・・・・・・
と言うように、場所を変えながら、どんどん練習していきます。
実際に練習していただくと、次の事に気づくと思います。
「1に近づくにつれて、ネットにはかかりにくいがアウトしやすい」
「6に近づくにつれて、ネットにはかかりやすいがアウトしにくい」
この理由はネットまでの距離が変わるからです。
理屈は当たり前の事ですが、この当たり前を実際に身体で経験する事がとても重要です。
頭で分かるだけで、実際にこの体験をしない為に、サービスエリアに入れる感覚を身につける事が出来ないのです。
ところが、少し、この練習をするだけで色々な感覚が分かるようになります。
「どれぐらいの力加減で打てば良いか?」
「どれぐらい山なりのボールを打てば良いか?」
「どれぐらいの高さを通せば良いか?」
こういう感覚が分かり始めます。
サーブを安定してサービスエリアに入れる為にはフォームや打ち方を改善するのではなく、このような感覚に気づく事がとても重要になります。
ちなみにこの練習の良い所は「アウトが多い傾向がある人」でも、「ネットが多い傾向がある人」でも、問題なく必ず、サービスエリアにコントロールする感覚を掴む事が出来る事です。
理由はどちらの傾向を持っていても、必ず、どこかの場所で安定してサービスエリアに入る経験が出来るからです。
「サーブが入らない」と言う悩みを持っている人にとっては、例え、ベースライン上からではなくても、サービスエリアに入ると言う体験をする事がとても重要なのです。
サービスエリアに入る感覚から、違う場所に移動する事で、その場所との違いが分かりやすくなり、結果的にサーブの距離を自然と調整する感覚が分かって来るからです。
なぜ、サーブのコントロールが良くならないのか?
ここでは「なぜ、サーブのコントロールが良くならないのか?」その理由についてお話します。
ほとんどの場合。
アウトが多い傾向を持つ人は中々ネットする事が出来ません。
また逆にネットが多い傾向を持つ人は中々アウトする事が出来ません。
どちらの場合も無理にネットまたはアウトしようとすると極端にばらついて、ボールがどこに飛ぶか分からなくなります。
では、なぜ、こうなってしまうのか?
一番大きな理由はサーブの打点とインパクト後のボールが飛び出す角度の関係が分かっていないからです。
サーブの場合、打点がネットに近づけば、ラケット面は地面の方へ向く事になり、ボールは下の方へ飛んで行きます。
逆に打点がネットから離れれば、ラケット面は空を向く事になり、ボールは上の方へ飛んで行きます。
サービスエリアにサーブを入れる為には、この角度がちょうど良い打点でヒットする事が必要になります。
サーブのコントロールが良いプレーヤーはこの打点と飛び出す角度を調整する感覚を持っています。
アウトするようなら、打点を少し前に。
ネットするようなら、打点を少し後に。
頭ではなく、身体がこの事を知っているわけです。
ところが、アウトが多い傾向を持つ人は打点を前してヒットする感覚を知りません。
逆にネットが多い傾向を持つ人は打点を後ろにしてヒットする感覚を知りません。
その為に「アウトばかりしてしまう」「ネットばかりしてしまう」
こんな状況に陥るわけです。
打点とボールが飛び出す角度の関係は決まった物があるわけではありません。
プレーヤーは皆、骨格も違えば、筋肉も違います。
また、スイングも違えばグリップも違います。
当然、スイングのパワーやスピードも違います。
その為に、それぞれ、自分の打点と飛び出す角度の関係を知るしかありません。
ただし、知ると言っても頭で理屈を理解しても意味がありません。
大切な事は身体が感覚としてこの関係を知る事です。
それが分かると身体は自然とボールが飛び出す角度を調整して、ボールが飛ぶ距離をコントロールしてくれます。
その為には先ほど紹介したような様々な場所から距離と角度が違う体験をする事がとても効果的です。
ちなみに最も効果が無い練習は同じ場所から、フォームや打ち方を改善してボールのコントロールを身につけようとする練習です。
残念ながら、この練習をいくら繰り返しても、最も重要な打点とボールが飛び出す角度の違いを体験する事が出来ません。
その為に中々サービスのコントロールを身につける事が出来ないのです。
サーブは出来るだけ高い所で打つほうが良いという大きな勘違い
では、最後に打点に関する勘違いについてご紹介しておきます。
多くの場合、「サーブは出来るだけ高い所で打つ方が良い」と言われます。
ですが、これは大きな勘違いです。
「高い所で打とう」とすると、ほとんどの場合、打点は頭よりも後ろになって、身体は締まりを無くし、ボールに力を集中させる事が出来ません。
その為に、インパクトでボールを捕らえる事が出来ずに、抑えの効かない力の無い抜けたボールが飛んで行きます。
ちなみにこのような状態に陥るとコーチはほとんどの場合、「打点を少し前にしてみましょう」と言うでしょう。
つまり、「高い打点で尚且つ、前で打ちましょう」と言うわけです。
ですが、ちょっと待ってください。
実はこんな打点は存在しないのです。
なぜなら、打点を前にすると言う事は、打点は低くなると言う事でもあるからです。
サーブのスイングを簡略化するとラケットヘッドは肩を中心に円軌道を描きます。
その為に、打点をネットに近づけると言う事は同時に打点が低くなっていく事になるのです。
ところが、この事を勘違いしていると、あり得ない状態を目指して練習する事になります。
それがサーブの上達を阻害します。
確かに、打点が身体に近くなり、腕が上手く使えない状態では問題です。
その為に、身体から遠い場所でボールをヒットする事はとても大切な事です。
その方が腕が伸びて、身体が作ったエネルギーを上手く伝える事が出来るからです。
ですが、それは必ずしも高い場所と言うわけではありません。
「身体からは遠いが、少し低いところ」の方がスイングエネルギーが集中し、抑えが効いたボールをサービスエリアにコントロールする事が出来るようになります。