ストロークでトップスピンのボールを打つには?
なぜ、トップスピンが打てないのか?
今回はストロークでトップスピンをかけるコツと秘訣についてお話ししたいと思います。
一般的にはトップスピンが苦手なプレーヤーには下記のようなアドバイスがされると思います。
・グリップに問題ある
もう少し厚く握る事でスピンがかかりやすくなる
・スイングがラケットヘッドが下から出ていない
もっとラケットヘッドをさげてボールを下から捕らえる
・脱力が足りない
もっとリラックスしてヘッドスピードを上げる事でトップスピンがかかるようになる
・膝が上手く使えていない
膝を伸ばして上に上がる力でボールを持ち上げる事でトップスピンがかかるようになる
他にもスタンスの向きやプロネーションの使い方など様々なアドバイスがあると思います。
ですが、実際に試してもらうと、これらの方法はとても難しく中々トップスピンが打てない事がすぐに分かると思います。
もちろん、中にはこれらの方法で打てるようになる方もいます。
その方はこれらの方法でトップスピンの感覚を掴んだわけですから、素晴らしい事です。
そのまま、その感覚を磨き続けて欲しいと思います。
ですが、大多数の方はこれらのアドバイスを実践してもトップスピンは打てません。
理由はこれらは全て外観から見たアドバイスであり、内的な感覚を磨く為のアドバイスや練習方法ではないからです。
テニスは見た目のフォームや打ち方を真似たからといって上達出来るわけではありません。
それは自転車を乗る事を考えるとすぐに分かると思います。
まだ乗れない人が自転車に乗る姿勢や形を真似たからと言って、自転車に乗れるわけではありません。
自転車に乗るには倒れないようにバランスを保つバランス感覚が必要です。
そのバランス感覚を身につけた時に自転車は乗れるようになります。
これはテニスの技術においても同じ事が言えます。
グリップやフォーム、ラケットヘッドの使い方、脱力、膝の使い方などがトップスピンに関係している事は間違いがありません。
ですが、これらを真似てもトップスピンが打てるわけではないのです。
自転車の姿勢を真似る事と同じです。
トップスピンを打つ為に必要な二つの感覚
では、どうすれば、トップスピンは打てるようになるのか?
段階的に必要な条件を整えていく必要がありますが、ここでは最初に特に重要な二つの感覚についてお話しします。
視覚で飛んで行くボールを観察する
一つ目は視覚です。
人間の身体は外界からの情報を五感から得て、行動します。
中でも視覚から得る情報は非常に多く、全体の90%近くの情報を得ていると言われています。
つまり、トップスピンを打つにも視覚情報が最も大切と言う事になります。
ところが、一般的にはこの最も大切な感覚についてアドバイスされる事はありません。
これでは、トップスピンを打つ事が難しくなってしまうのは容易に想像できると思います。
では、具体的に視覚をどのように使うか?
実はとても簡単です。
自分が打って、相手のコートに飛んで行くボールの回転を観る事です。
自分が打ったボールがどのように回っているのか?
その回転の向きと方向を観察します。
トップスピンが打てなくて悩んでいる方はぜひ、試してみてください。
「自分のボールがどう回っているのか?」が見えていないはずです。
コーチから「トップスピンじゃない」と言われたり、アウトしてしまうから「トップスピンが打てていない」と思っているだけで、実は自分の打ったボールが「本当はどのように回っているのか?」は観えていないと思います。
実はこれこそがトップスピンが打てない一番大きい原因です。
人間の脳にはフィードバック制御と呼ばれる機能が備わっています。
自分の打ったボールの回転の向きが観えてくれば、この機能が自動的に働き始め、自己修正能力が働き始めます。
そして、身体が「どうすれば、トップスピンの回転を与える事が出来るか?」を学び始めます。
それは、自転車に乗れなかった人がバランス感覚を養っていくのと同じです。
その為に、自分が打ったボールの回転が観えて来るとしばらく練習するとすぐにトップスピンが打てるようになります。
触覚でインパクトの衝撃を感じる
次に必要な感覚は触覚です。
触覚と言うのはインパクト時に手のひらが受ける感覚です。
多くのテニスコーチ、テニスプレーヤーは勘違いしていますが、ボールにトップスピンがかかる理由はガットとボールに摩擦が生まれるからです。
振り方や打ち方でボールに回転がかかるわけではありません。
いくら下からラケットを振っても、ラケット面が打球方向と直角に当たるとボールには回転はかかりません。
これは摩擦が生まれないからです。
ところが、ラケット面とボールが飛んで行く方向が違うとボールとガットの間に摩擦が生じます。
実はトップスピンはこの摩擦によって生まれるのです。
逆に言えば、摩擦が起きないとどんなグリップでどんな打ち方をしてもトップスピンは打てないという事になります。
また、より威力のあるトップスピンを打つにはガットとボールの間で起きる摩擦を大きくしてやる必要があるという事です。
その為に必要な感覚が触覚です。
インパクトの瞬間には手のひらに何らかの衝撃が加わります。
この衝撃はボールの捉え方によって大きく変わります。
トップスピン、フラット、スライス、みんな違う振動や感触がします。
触覚を磨く練習をするとこの違いに気付くようになります。
そうすると、「どんな捕らえ方をすれば、トップスピンがかかるか?」が分かるようになります。
そして、その捕らえ方を練習しているとその為に最適なグリップ、ラケットヘッド、ラケット面の使い方、身体の使い方などが分かるようになります。
つまり、トップスピンを打つ為の打ち方が分かるという事です。
こうして身につけたフォームや打ち方がトップスピンを打つ為の技術です。
フォームや打ち方などの技術はあくまでも、感覚を磨いた結果に生まれて来る物です。
外観から真似るだけでは、感覚を養う事が出来ません。
その為に、中々トップスピンが打てるようにならないのです。
ちなみにこのように内的な感覚を磨く事でトップスピンを打つ練習をすれば、驚くほど簡単にトップスピンを打つ事が出来ます。
勘の良い人であれば、15分もあれば、その感覚を掴む事が出来ます。
逆にどんなに勘が良くても、外観を真似る練習では、中々トップスピンを打つ感覚を身につける事は出来ません。
それだけ、非常に難しい練習方法、上達方法だという事でもあります。