打ち方の練習をしないほうが何倍も早く上達する事実
一般的にテニスの練習と言えば、フォームやボールの打ち方を練習する事がほとんどです。
実際にテニススクールに通えば、その練習時間の大部分はボールの打ち方の練習に充てられています。
youtubeの動画やDVDでも、打ち方、フォーム、身体の使い方のノウハウが氾濫しています。
これは上達する為には「良い打ち方を身につける練習が必要」と考えられているからです。
つまり、今のテニス界は「テニスの上達=良い打ち方を身につける練習」が常識となっています。
ですから、「良い打ち方を身につける練習」が本当に上達の早道なのか?
こんな疑問を持つ方は非常に少ないと思います。
ですが、注意深く現実を観察すると実は「良い打ち方を身につける練習」はテニスの上達の早道ではない事に気づきます。
今回はこのあたりについてお話ししたいと思います。
そもそもフォームや打ち方とは何か?
テニスには6つのショットがあり、それぞれのショットについて正しい打ち方や最新の打ち方を指導されるのが一般的です。
ですが、正しい打ち方とはどういう物でしょう?
また、最新の打ち方とはどういう物でしょう?
世界のトッププロ達は誰一人同じ打ち方をしていません。
では、彼等のどの打ち方が正しいのでしょうか?
また、今現在の最新の技術は本当に優れているのでしょうか?
その答えはテニスの歴史を振り返ってみるとすぐにわかります。
過去からテニスの技術は常に進化してきました。
今の最新の打ち方やフォームも後10年もすれば、また、古い技術になるでしょう。
最新の技術を良しとするなら、今の技術を練習しても無駄になってしまいます。
そう考えると、「正しい打ち方とは何か?」「最新の打ち方とは何か?」「一体何を練習すれば良いのか?」分からなくなってしまいませんか?
実は「そもそもフォームや打ち方とは一体何か?」を考えるとこの答えが見えてきます。
そもそもフォームや打ち方とは「ボールをイメージ通りに操る為に必要な身体の動き」です。
なぜ、テニスの技術は過去から進化し続けてきたか?
それは「もっと正確に」「もっと速く」「もっと回転を」追求してきたからです。
つまり、フォームや打ち方はボールを操る為の方法論の一つでしかないのです。
ですから、人によって、違う事も、時代によって変わっていく事も当たり前の事なのです。
少し乱暴な言い方をすれば、フォームや打ち方はどうだっていいんです。
ただし、「ボールが速く、強い回転をかけて、正確にコントロール出来れば」
そもそもフォームや打ち方はそういう物です。
ここを勘違いするとテニスは中々上達する事が出来ません。
ですが、残念ながら、あまりにもこの勘違いが常識になっているために、テニスは非常に難しいスポーツになってしまっているんです。
打ち方やフォームを練習しても上達しない理由
先ほどもお話ししたように実はフォームや打ち方は方法論の一つでしかありません。
方法は無数にあります。
それは、山の頂に登るには無数の方法が存在するのと同じ事です。
ですから、極論、ボールを操る事さえできれば、どんな打ち方やフォームでも全く構わないわけです。
ところが、ここを勘違いしているテニスコーチやプレーヤーが非常に多いのが現実です。
もちろん、「フォームや打ち方が関係ない」と言ってるわけじゃないんです。
ですが、「目的と方法論が逆転するとテニスは上達しないよ」と言う事です。
練習しているにも関わらず、中々上達しない方は「ボールを操る事を目的とせず、打ち方を身につける事が目的になっている」という事です。
簡単に言えば、「正しい打ち方を身に付ければ、そのうちボールがコントロールを出来る」と勘違いしているわけです。
残念ながら、こんな事は起こりません。
ところが、ほとんどのテニスコーチは言います。
「その時はこんな風に打てば、こんなボールが打てるようになりますよ」
「こんな打ち方をすれば、こんなボールが打てるようになりますよ」
「そこをこんな感じに直せば、上手く打てるようになりますよ」
そして、生徒さんは素直にそこを直そうと練習します。
ですが、落ち着いて良く考えてみましょう。
この時点で練習の目的が変わってしまっている事に気づくはずです。
「ボールを操る事」から「フォームや打ち方を改善する事」に。
「コーチの言うように打てれば、コーチと同じようなボールが打てるんだ」と漠然と思ってしまう訳です。
でも、何度も言いますが、これは起こりません。
実際にご自身の周りの人達を良く観察してみましょう。
コーチのアドバイスを素直に実践しているプレーヤーが本当にグングン上達していますか?
実はそうではない事に気づくはずです。
真面目にコーチのアドバイスを実践している人ほど、伸び悩んでいる方が多いはずです。
逆にコーチのアドバイスに拘らず、自分のフィーリングを大切にしている人の方が何倍も早く上達しているはずです。
ところがこういう一部の人を観るとほとんどの人はこう言います。
「あの人は運動神経が良いから」
「あの人は勘が良いから」
「あの人はセンスや素質があるから」
でも、それは逆です。
目的と方法論を間違わないから、運動神経が良くなってきたんです。
フォームや打ち方を改善する事より、ボールを操る自分の感覚を大切にしてきたから勘が良くなってきたんです。
つまり、あなたが上達する方法も同じです。
まずは、「打ち方やフォームを身につける練習を止める事」実はこれがとても重要な事なんです。
なぜ、打ち方の練習をするのか?
先ほどもお話ししたように、打ち方やフォームを身につける練習をしてもテニスは上達しません。
やれば、やるほど、テニスが難しくなるだけです。
にも関わらず、なぜ、テニスコーチはみんな打ち方を指導するのか?
また、生徒さんはみんな打ち方の練習をしようとするのか?
それは二つの勘違いが大きな原因だと私は考えています。
一つ目は「あるコツに気が付いたプレーヤーは、そのコツを伝えれば、その人も早く上達すると思う」
そして、二つ目は「あるコツを聞いて練習すれば、そのコツが早く身に付くと思う」
この二つの勘違いが原因だと私は思っています。
でも、残念ながら、この二つは起こらないんです。
例えば、一つ目の勘違い。
あるコツに気が付いたプレーヤーはそのコツに気づくまでにどんな練習をどれぐらいしたんでしょう?
何もしないで突然、出来るようになったわけじゃないはずです。
そのコツに気づくまで相当の努力をしてきたと思います。
その過程をすっ飛ばして、結論だけを伝えても「大切な事が伝わらない」と考えるのは私だけでしょうか。
もちろん、同じような練習を同じだけ努力してきた人に最後の最後のヒントとして伝えたら、それは何かが伝わるかもしれません。
ですが、ほとんどの場合はそんな状況ではないと思います。
二つ目の勘違いも同じです。
遠回りをしないように、出来るだけ、効率よく上達したい。
この気持ちはよく分かります。
実際に私もそんな風に思う時がありますから。
でも、冷静に考えたら、そんな都合の良い事はないんです。
テニスは頭で理解すれば良いんじゃありません。
身体に身に付かないと意味がありません。
頭ではなく身体が学習しないといけないわけです。
つまり、「経験が全て」って事になります。
経験を繰り返し、感覚を蓄積する事である時、コツとして気づくわけです。
その過程なく、何かを身につける事は不可能です。
結局はテニスの上達に早道はないという事です。
ですが、だからと言って、テニスが上手くなるには「たくさんの時間と練習量が必要だ」と言っているのではないんです。
むしろ、全くの逆です。
実はフォームや打ち方の練習に時間を割かないで、ボールを操るために必要な練習に時間を使えば、テニスは短時間で上達する事が出来ます。
それは子供達が見る見る間に上達していくの見ればわかると思います。
40歳を過ぎても、正しい練習をすれば、彼等と同じようにグングン上達する事は出来るんです。
打ち方を目的にしないほうが上達する事実
私はレッスン中、フォームや打ち方の指導をほとんどしません。
その練習のほとんどを「ボールを知る」「自分を知る」「相手を知る」時間に充てます。
特にボールを打つテクニックを身につける為には「ボールを知る」練習に重点を置きます。
理由はとても簡単です。
ボールを操る為にはまず、ボールの事を良く知らないと操りようがないからです。
相手の事を理解せず、自分の想いをぶつけても、相手がこちらの言う事を聞いてくれるわけがありません。
そんな事をすれば、ただ、ぶつかり合うだけです。
ボールが上手く操れない一番の原因はボールの事を知らないからです。
ボールの速度、飛んで来る距離、弾む高さ、回転の影響、飛んで行く距離とエネルギーの関係、高さと距離の関係など。
これらボールの質が分かるようになるとボールとの関係性が良くなります。
例えば、ボールとの距離感が分かるので、どこに移動し、どこで構えれば良いかが簡単に分かるようになります。
その結果、ボールがとても打ちやすくなります。
当然、タイミングを合わせるのも簡単です。
そんな状態でボールと相対する事が出来れば、ボールをコントロールする事は簡単です。
頑張って狙わなくても、自然と自分の思った所に飛んで行ってくれます。
打点が良くなり、タイミングが合うわけですから、それも当然の事です。
ボールが上手くコントロールできない一番の原因はボールとの関係性が良くない事です。
「ボールとの距離が合わない」
「打点が違う」
「タイミングが合わない」
・・・・・・
ボールを知る練習をしていない人は「とにかく、いつもボールが打ちにくい」と感じています。
こんな状態ではボールにラケットを当てるのが精いっぱいでコントロールするどころではありません。
増してや、自分からエネルギーを加える事など出来るはずがありません。
つまり、ボールを上手く操れない根本的な原因はボールの事を知らない事にあるんです。
ですから、そこに集中して練習するんです。
そうすると段々、ボールの事が分かってきます。
ボールの事が分かり始めれば、しめた物です。
ボールが打ちやすくなって、ボールを打つ事が簡単になります。
そして、ボールが勝手に言う事を聞いてくれます。
ちなみにこの時、フォームや打ち方はどうなるか?
「いくらボールが打ちやすくなったとしても、打ち方が分からないと上手く打てないじゃないか!」
と思いますか?
いいえ、実はそんな事はないんです。
それは、大きな勘違いです。
私達の身体は自分が考えている以上に素晴らしい能力を備えています。
テニスボールを打つ程度の事は誰かに教わらなくても自動的に出来てしまうのです。
私達の身体は効率の悪い動きをしようとはしません。
無駄にエネルギーを使う事は、生命の維持に反する事だからです。
その為に私達の身体は出来るだけ、怪我や故障をせず、尚且つ、必要最小限のエネルギーで身体をコントロールするように学んで行きます。
これは本能のような物です。
この能力が備わっているおかげで赤ちゃんは誰に教わるわけでもなく、自然な歩き方を覚えていきます。
本来、テニスもこれと同じ過程を踏めば、誰かに教わらなくても、無駄のない自然で美しいフォームを身につけていきます。
ところが、歩く事と違って、テニスはボールが動いています。
最初はボールの打点やタイミングが分かりません。
その結果、動きのバランスをボールに崩されてしまいます。
このバランスが崩された状態のままでボールを打っていると段々、無理で不自然なフォームが身に付いてしまう訳です。
ですが、根本的な原因はボールを知らない事にあります。
ボールの事が分かり始めると、フォームや打ち方は自然とバランスの良い物を身につけていくのです。
実際、私の指導ではほとんどフォームや打ち方は指導しません。
ですが、だからと言って、不自然で変なフォームを身につけるなんて事は全くありません。
むしろ、その逆です。
フォームを指導しないのにフォームは自然と良くなっていきます。
そもそも打点がとても良くなります。
打点が良くなれば、フォームや打ち方には再現性が生まれ、滑らかで自然なフォームに変わっていきます。
つまり、打ち方やフォームを練習していないのに、結果的には正しいフォームを身につけていくという事です。
先ほどもお話ししたようにフォームや打ち方は方法論の一つでしかありません。
どんな打ち方でも構わないのです。
ただ、実際にはボールを安定してコントロールする為には、それに必要な動きがあります。
どうやれば、その動きを身につける事が出来るか?
打ち方を練習せずに、「ボールを知る練習をする」
そうすると結果的に正しいフォームを身につけるわけです。
フォームや打ち方を練習している方には中々信じられない話かもしれません。
ですが、これが事実です。
実はテニスはあなたが考えている以上にとても簡単なスポーツなんです。